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ー前編のあらすじー
田舎育ちの父が、都会育ちで軟弱な娘たちと柴犬ガウナに自然の素晴らしさと厳しさを教える為、登山すること提案。
都会育ちで軟弱な娘たちの性根を叩き直す予定が、早々に置いてけぼりを食らってしまう。
山道を颯爽と駆け抜けた、若かりし20年前。
まだ父が実家に住んでいた20年前、この山は庭の一部のような感覚だった。
目をつぶれば、今でも山頂まで全ての道程が脳裏に記される。
あの頃、ダッシュで登頂し、さほど休まずにダッシュで駆け下りても平気だった。
思い返せば、あの頃は今より20kg痩せていた。
一旦つぶった目を開け、目の前に立ちはだかる山道を見上げる。
そこに娘たちとガウナの姿はもうない。
「おーい」
見えない娘たちとの距離を知ろうと、大きな声で呼びかけてみた。
…..。
返事すらない。
「ああ、そうか。父は完全に置いていかれてしまったんだ….。」(涙)
山を登りながら娘たちと話したいことは沢山あった。
家の中ではテレビやスマホに注意を奪われる為、年頃の娘とはなかなかゆっくり話をすることができない。
父は山を登りながら、大自然の中で父の幼少期や山での豆知識などを娘と語り合いたかった。
これは、イノシシが登った跡なんだぞ。とか、
小さい時にこの崖から谷底に落ちて、死にかけたんだぞ。とか
アシナガ蜂に眉間を刺されて悶絶したんだぞ。とか、
親子の会話に花が咲きそうな話題は沢山あったんだよ。
それでもなんとか山頂へ。
結果一人で登っているも同然となり、もはや周りなんか関係ない。
「もう少しだ!」「よっしゃ!」「おしっ!」「いける!」「もう着く!」
恥ずかしげもなく己を鼓舞しながら最後の難関を超えると青空が見えた。
父「っしゃー!とうちゃーく!」
間髪入れず、
次女「父遅せーわ!」
長女「おっそ!」
まーそう言うなよ娘たち…。
家族とガウナと登った山の景色は最高だった。
山からの景色は、小さい頃に見た景色とは少し変わっていた。
当時は無かった高層階のマンションもちらほら。
わが町はこの20年で確実に進化を遂げていた。
20年前に一人でこの景色を見ていた小坊主が、今は明るい家族と犬と共に、またこの景色を見ている事に感慨を覚える1日となった。
おしまい
山頂での記念撮影に、なぜか背筋がピシッとなるガウナ
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